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「食べることができる」と「食べられる」は同じ可能ですか?
何か違いがあるのかな?教えてください
オンライン日本語教師のちゃそです!
「ことができる」と可能形はどちらも初級で出てくる内容です。
同じ”可能”だし、入れ替えができる文も多いし、何が違うのかよくわからないですよね。
この記事では「ことができる」と可能形の違いを
- 書き言葉的 vs 話し言葉的
- 状況可能と能力可能
- 評価
この3つの面から説明します。

一緒にポイントを押さえましょう~♪
動詞の可能形の作り方についてはこちら↓
「ことができる」と可能形の違い
ほとんどの場合、言いかえることができますが、ざっくり区別すると
- ことができる…書き言葉
- 可能動詞…話し言葉
でそれぞれ使われることが多いです。

あらたまった場面やかたい文章では、「ことができる」のほうが好まれるそうです
例えば友だちにお酒が飲めるかどうか聞きたい時どっちが自然ですか?
①「お酒飲める?」
②「お酒飲むことができる?」

やっぱり①かな?
「ことができる」より動詞の可能形の方が短いです。
それも、ふだんの会話で使われやすい理由になりそうですね。
ただし、「ことができる」を使ったからといって間違いではないです!

状況によってより自然な方を選べるようになるといいですよね!
では、違いをもう少しだけ掘り下げていきます
能力可能と状況可能
可能表現は、能力や可能性を表します。
- 能力可能
- 状況可能
この2つに分けられます。
動作主が持っている能力として「~できる」⇒能力可能
状況が許すから「~できる」⇒状況可能

言葉で説明するだけじゃわかりにくいので、例文をみてみましょう!笑
- ①能力可能
- 私、まったく泳げません。
- 山本さんはフランス語が話せる。
- ②状況可能
- プールが改装中なので泳げません。
- この部屋では携帯が使える。
①の能力可能は、”私”は金づちで、泳ぐ能力を持っていない
”山本さん”はフランス語を話せる能力を持っていること、ですよね。
②は、”プールが改装中”で泳ぐことができない
”この部屋”だと、携帯を使うことができるという、状況や条件で「できること/できないこと」を話しています

「能力可能」はその人のポテンシャル、持っている能力ってことだね!

「状況可能」はその人の能力の話じゃなくて、状況・条件によってできるかできないか変わるってことかな?
「~ことができる」は状況可能で使われやすい
「状況可能」の文では、「~ことができる」になりやすいです。
例えば
- 試験やイベントの説明
- 施設やサービス案内
- 町や観光地の説明など
の説明などで使われることが多いです。

こういうのは書き言葉的・フォーマルな場面が多いよね!
例をみてみます。
こちらはJLPT(日本語能力試験)の案内です。
◆団体申込の場合、団体代表者宛に申込者全員の受験票を一括して郵送します。また、団体代表者のMyJLPTの「申込者情報確認・変更」画面で、申込者全員の受験票の内容を確認することができます。
(2)受験票が届かないときや、なくしたときは、MyJLPTの「申込者情報確認・変更」画面の受験票を印刷し、試験会場に持って来てください。正式な受験票として使用することができます。”
次はTOPIK(韓国語能力試験)のWEBサイトのQ&Aです
Q:ログインしても過去の受験データが受験履歴にありません。
A:旧サイトでの受験者様の情報は、新サイトで引継ぎができないため、過去のデータを確認することが出来ません。
そして、英検for kidsの説明です
飲み物を試験中に出して飲むことはできません。
これに関しては「飲み物を試験中に出して飲めません」にすると、少し違和感があります。

主語がよくわからないというか、なんか詰まった感じがするね

みんなに向かって言ってるのか、誰かのことを話しているのか曖昧で、注意点を説明している感じが薄れるのかな?
注意やルール説明は「~ことができません」のほうがしっくりきそうですね
また国際交流基金制作のいろどり生活の日本語の初級1では「町や観光地の説明」で出てきます。
状況可能で「~ことができる」が出てきています。
可能形にしても問題なさそうですが、こちらの方が少~しだけかたい印象ですね。
可能形の文法的特徴4種類
ここからは、別の分け方を見てみます。
初級を教える人のための日本語文法ハンドブックでは、可能を文法的特徴から四つに分けています。
①人などの現在実現している能力を表す場合
(1) 一晩かかってレポートがやっと書けた。
②人などの潜在的な能力を表す場合
(3) 僕にはそんな難しい問題は解けない。
③(目的語の潜在的な被動作の可能性を表す場合。動作主の存在は薄れ、ガ格で表させるものや人が一般的に動作を受ける可能性があるかどうかを表します。
(4) あのかえるは食べられます。
英語の-able/-ibleで終わる形容詞を含む文はこれに該当します
④目的語の潜在的な被動作の可能性を表しながら同時に話し手が属性の判断をする場合。原則的に発話時に拘束され過去は言いにくくなります。
(5)この酒は飲める。(=「おいしい」という評価)参照:初級を教える人のための日本語文法ハンドブックp85-86

ちょ、ちょっと難しそう…!

もうちょっとざっくりとまとめてみますね!↓
①実際にできたことを表す
「やっとレポートが書けた!」
今まで頑張ってきたことが、ついにできた!という意味です。
「書く力があった」というより、「実際に書き終えた」ことに注目しています。

課題の本、全部読めたー!やったー!と同じだね
②その人の能力やスキルを表す
「田中さんは100mを12秒で走れる」
この文は、田中さんの持っている運動能力やスキルを表しています。
「走ることができる=その力がある」という意味です。

ぼくは12か国語を巧みに操れるのさ…✨
③モノや人が、されることが可能かどうかを表す
「このきのこは、毒がないから食べられる🍄」
この文では、「誰かがこのきのこを食べることができる」という意味です。
英語の「-able/-ible」の形容詞に似ていて、「食べることが可能かどうか」を言っています。

プレゼントでかわいいお皿をもらったんだけど、
電子レンジで使えるから便利♪
④できる+話し手の評価(いい・悪い)
「この酒は飲める(=おいしい)」
この文では、「飲める=飲むことが可能」だけでなくて、「それなりにおいしい」「悪くない」など、話し手の感想・評価が含まれています。
「できる」だけじゃなくて「どう思っているか」も伝えているのが特徴です。

はあ…できる人間になりたい
評価は「~ことができる」を使わない
4つの分類、ちょっと混乱しましたよね。
大丈夫!気にしてほしいのは「④できる+話し手の評価」です。
この使い方だけは、「~ことができる」で言い替えることができないです。
動詞の可能形を使ったとき「この酒は飲める」→おいしいという意味になりました。
「このお酒は飲むことができる」にするとどうでしょう?

ただ単に、飲めるかどうか、飲んで大丈夫かの話になるね?
「ことができる」を使うと、「おいしい」という評価は伝わらなくなります。
まとめ:違いは「フォーマルさ・状況可能・評価」
「ことができる」と可能形の違いについて紹介しました。
2つはほとんどの場合、置き換えが可能です。
ですが少し違いがありましたね。
「ことができる」は可能形に比べて
- 書き言葉的
- 状況可能で使われやすい
サービス案内や、町や観光地の説明などで使われることが多いです。
日常会話で使うと少しかたい印象になることがあります。
「可能形」は
- 話し言葉的
- 評価を表せるのは可能形だけ
日常の会話では、可能形の方が自然な感じがします。
そして「この酒は飲める(おいしい)」のような評価を表すものは「ことができる」と交換できません。
「評価」以外は、絶対に交換できない!とは言えません。
なので、そういう傾向がある、好まれる、ぐらいに捉えておくといいと思います!

学習者に伝えるときは、混乱させないように
まずは「カジュアルな会話では可能形が多いよ」ぐらいでいいと思います
わたしもまだまだ勉強中です。よかったら一緒にがんばりましょう♪
この記事を書くのに参考にしたもの
ありがとうございます!